サボテン備忘録

面白かった映画の感想を書こうかな.

Netflix: Love, Death & Robots

Netflixのオリジナル作品:Love, Death & Robots,を見た.
全部ではないが,第1~9話と最後の第18話を見た.

これはなかなか面白い.
まずアバターのきれいさに驚く.どういう仕組みなのか全然知らないが,ほんのわずかな違和感(アテレコゆえの時差etc.)だけで生身の人間との見分けがつかないこともある.

かつまた,シリーズ1には18話のdisjointな話があるが,各々10分程度であるからとても見やすい.さくっとみられる.なのに各々面白い.

内容については,私が見た話に限定すると,
「ある文脈の終焉と頽廃,そしてその先」
「人間文明の徹底的な敗北」
「逃れられないことから逃れられない」
という仕組みの挑戦だと考えられ,日本で言うと「世にも奇妙な物語」のハイクオリティ版だともいえるかもしれない.

例えば:
第3話:古い冷蔵庫を開けると中にはもう一つの地球があり,氷河期から始まって産業革命,現代,そして未来を俯瞰できる.最終的に,人類文明が滅びて,もう一度恐竜の時代が始まる.つまり,地球の目線からすれば人類が勝手に成長して勝手に滅びるという事実だけがその上に広がり,全く同様に,ただ恐竜が現れ,氷河期が現れる.その事実に直面する若いカップルは,冷蔵庫の前で見つめあい抱きしめ合うことしかできない.過去も現在も未来も,情報として脳内で処理されるだけで,何ら直接的な体験ではない.ただ直接的な体験は,目の前の恋人だけ.
第5話:ヨーグルトが人間に代わって政治を行い,国家運営を行う.ヨーグルトの啓示を聞いた'賢い'人間たちは,幸せに,健康に,豊かに暮らし,そうでない人々は,そうではない.ヨーグルトというチョイスが良いと思う.つまり,健康の見方であってネガティブな側面はない.AIやロボットやエイリアンとは違い,我々の良く知っているものである.これは乗っ取られることへの警鐘や恐怖ではなく,「乗っ取られのススメ」である.factor X (e.g., ヨーグルト) は何でもいい.科学技術,ロボット,AI,教祖様など,なんでも考えられる.端的に言えば,乗っ取られた方が幸せで楽しいのではなかろうか,という挑発に思える.あるいは,人類史を抽象的に寓話化したものか.
第18話:ある天才芸術家の作品と個人史についての話.素晴らしい作品の上から,中心に,青い単調な幾何学的図形を配置して人々をいらだたせる.その図形は次第に大きくなり,もはや青しかなくなる.最後の作品を大観衆の前で完成させる際に,この芸術家は自らの業績と名声を捨てて,すべてのはじまりに戻ることを選択し,それを見せつける.つまり,奴隷への回帰を選択する.

 

共通しているのは,"逃れられず豊かなる望みもない文脈へ自らを埋め込むことへの覚悟はあるか".

 

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